研究概要 |
平成2年度における研究は,韓国,台湾の2ケ国について,文献・統計資料,現地実態調査研究等により,中小企業の実情を究明し,国民経済発展及び国民経済構造の中での位置付けの明確化を図り,日本との比較分析・考察を行った。具体的な研究の実施は主に,(1)この分野における従来の研究について,関連文献の収集・研究,(2)中小企業の実態把握のため,関連ヒヤリング調査及び各種統計資料の収集・分析を行った(ただし,当初予定したいた産業連関分析については統計資料の制約から,困難となった)。この結果,次の諸点が明確となった。すなわち,韓国,台湾いずれも,その工業化過程においては,従来の軽工業から,電気機械を中心とした組立加工型機械工業へと工業構造を高度化させてきた。こうした産業構造高度化は貿易構造と不可分の関係にあり,主力輸出製品もまた1980年代には電気機械がその中心品目となって,輸出工業化を進めてきた。他方,輸入品目でも電気機械,一般機械が中心品目となり,中間財としての部品や資本財としての機械が輸入増ないし高水準の輸入を続けている。電気機械を中心とした輸出の増加が,これら中間財や資本財の輸入を随伴するものとなっている。こうした貿易構造を輸出入相手国別にみると,輸出では米国向けが,輸入では日本からが最も多く,そのウエイトはいずれも1980年代に一段と上昇する,という構造になってきた。以上のような状況は韓国,台湾における関連・裾野産業を支える中小企業の質的発展・役割がなお十分でないことを示すものである。本年度は以上の研究成果を研究論文2点(裏面に記載)にまとめ,発表した。 平成3年度の研究では,このような研究成果を踏まえ,さらに香港,シンガポ-ル等についても調査研究し,政策的含意の分析・究明を中心に,本研究を深める。
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