^4_ΣHeは、束縛状態にあるシグマ・ハイパ-核として、現在までに報告されている唯一の例である。この報告は、高エネルギ-研究所で行われた静止ケイオン吸收の実験に基づいている。理論的には、現実的バリオン間相互作用を用いて、そのシグマ・ハイパ-核の存在を我々が予言していた。本研究の第一の目的は、このシグマ・ハイパ-核の存在を確定することである。そのために、新たな実験がブルックヘブン国立研究所で行われた。我々は本研究の中で、この実験の計画に理論面から参加し、反応断面積の予測及び実験結果の解析に寄与してきた。最終的な解析は、数ケ月後になると思われるが、予期した成果があがりつつあるといえる。 本研究の次の課題は、シグマ・ハイパ-核の存在形態の全体像をつかむために、重いシグマ・ハイパ-核の性質を明らかにすることである。我々は鉛の原子核を取り上げ、そこでは、ク-ロン力と強い相互作用とが協力して長寿命のシグマ・ハイパ-核状態をつくり出すことを明らかにした。この状態を実験で観測するときのことを考えて、ケイオン反応による断面積をグリ-ン関数の方法で計算した。一般に鉛のような重い核では、状態密度が高すぎて見たい状態が他のものにうもれてしまうと考えられていた。しかし、我々は、シグマ粒子が無反跳に生成される実験条件を設定すれば、目的としているシグマ・ハイパ-核の状態を選択的に励起できることを示した。この状態は、高い角運動量をもった状態であり、シグマ粒子に対するスピン・軌道結合力の大きさを知るきっかけになる可能性をもっていることを示した。 さらに、研究をストレンジネスがー2の系にすゝめることも出来た。これは、研究の今後の発展の足場とすることができ、本研究の最終年度の成果に加えることができると思っている。
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