私たちは、^4_ΣHと^4_ΣHeの束縛状態の存在可能性を4体計算によって理論的に示した。^4_ΣHeは、スピン・パリティO^+でアイソスピン1/2(99%)の束縛状態であり、結合エネルギーが3.7 4.6MeV、幅が4.5-7.9MeVであった。1989年、早野博士たちは、静止K^-吸収実験によってシグマ・ハイパー核の束縛状態が存在しうる証拠を得た。それは正に^4_ΣHeであり上の理論計算と良い一致を示した。 「^4_ΣHeの束縛状態は間違いなく存在するのか?」これはDalitz博士によって投げかけられた問いである。これに答えきるには、新たなデータが必要である。現在の実験施設が得られるものとしては、飛行K^-吸収のデータを入射運動量450MeV/c辺りでとるのが良いことを私たちは指摘した。早野博士たちはブルックヘブン国立研究所で600MeV/cの実験を行い、^4_ΣHeの存在について肯定的な結果を得つつある。 シグマ・ハイパー核の存在が軽い核の領域に限られるのか、或いはもっと普遍的であるのかは、興味ある問題である。重い核^<208>Pbとシグマの間のポテンシャルを調べてみると、核表面近傍に斥力の山が現われるという特異な振る舞いをしている。この斥力の山は、もともとのΣNポテンシャルの斥力と引力の強さが均衡していることから来るもので、重い核から軽い核まで普遍的なものであることが分かった。^<208>Pb核におけるh/_<11/2>のシグマ粒子は、クローン引力と遠心力とで核表面付近に閉じ込められ、その上に特異な形の強い相互作用を受ける幅の狭い状態として存在しうることを私たちは示した。飛行K^-吸収が無反跳の条件で行われれば、この状態が強く励起される。このように私たちは、重いシグマ・ハイパー核の存在は可能であることを指摘した。
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