まず、注入のある凝集系の1次元、及び、平均場の場合において、定常解の安定性と緩和の様子を理論的に解析した。定常状態において実現するべき分布のべきの指数が注入の型に依存することは、すでに得られていたが、緩和の場合には、単にべきの指数に留まらず関数型までが注入の型に依存することがわかった。また、定常分布であるべき分布は大変安定であり、いかなる初期値から出発してもべき分布に収束することが証明できた。さらに、注入の大きさ分布である場合や、空間的にフラクタル的に注入する場合も考察し、べき分布の指数は連続的に変化しうることがわかった。 次に、2次元、3次元のシミュレ-ションを試みた。1次元系の場合と同じように、注入が絶えずある場合には、粒子の質量の分布はベキ分布に従うことが確かめられた。ベキの指数は平均場の値に近いが、それが平均場の値と一致するのかどうかについては、シミュレ-ションによって明確にすることはできなかった。指数の精度を上げるには、計算機の容量を現在の100倍程度上げる必要があることがわかった。 これまでに得られた注入のある凝集系の統計的な性質に関する知識を応用するため、ランダムな表面の問題への適用を考えた。例として、地形の雨の侵食による形成過程を考えた。その結果、降った雨が凝集し、川となって地形を侵食するプロセスが、凝集系と似た性質を持つことがわかった。例えば、川の流量の分布はべき分布に漸近することが確認された。どちらの系でも、合流、あるいは合体という非可逆なプロセスがフラクタル的な統計性を実現させるのに大きな役割をになっていることがわかった。
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