地球内部と表層付近の物質・エネルギ-循環をモデル化し、地球史46億年間にわたる数値実験を行った。その結果、マントルの熱史と連動した大気・海洋進化モデルとして初めて総合的かつ定量的なモデルが得られた。考慮した元素はC、H、N、O、S、Ca、Mg、Fe、K、Arの10元素で、これらの元素が大気、海洋、大陸、海洋底、マントルという5つの圏間をそれぞれに固有かつ相互に依存した増応に従って循環するとした。マントルの熱史はパラメ-タ化対流モデルを用いて解き、その結果を用いてマントルから地表への脱ガス量を推定する。その制約条件としては ^<40>Arを用いた。考慮した主なプロセスは、太陽光度の増大、大陸地殻の形成、光合成による酸素の放出と有機炭素の生成、バクテリアによるパイライトの生成、熱水反応によるMg^<2+>の交換反応とFe^<2+>の放出そしてパイライトの生成、海水の化学平衡とpHの変化、CO_2による温室効果などである。 その結果、マントルからの脱ガス率を決める海洋底拡大速度はマントルからの熱流量には依存せず一定である場合のみ大気中の ^<40>Arの進化と調和的であることが新たな知見として得られた。この脱ガスモデルに基づく大気・海洋の進化モデルとしては、原始CO_2大気が大陸の成長と共にN_2大気へと変化し、地球史を通じてN_2は約1気圧前後に保たれること、O_2は生物の光合成とバクテリアによるパイライト生成の群果として大気中に放出されるが、地表図の風化率と還元気体の脱ガス率が時間的に減少するためO_2の消費率が減少し、その結果大気中に現在程度のO_2が残されることが示された。 このモデルを金星に適用し、金星の大気進化について新たな知見を得た他、地球環境の進化にとって重要な隕石の衝突フラックスの時間的変化について月の地形デ-タを基に推定することを試みた。
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