研究概要 |
1.ニトロオレフィンをジエン成分とする逆電子要請DielsーAlder反応付加体の合成について以下の新しい知見が得られた。 (1)α,pージニトロ桂皮酸メチルはビニルエ-テル類の他にも、ビニルスルフィド類とも同様に反応して、環状ニトロン酸エステル体(I)を与えることがわかった。 (2)α,pージニトロ桂皮酸メチルは、四塩化チタンを触媒として存在させながら反応させると、シクロヘキセンやスチレンの様なπ電子過剰でないオレフィンとも逆電子要請DielsーAlder付加をすることがわかった。 (3)1ー置換3,5ージニトロー2ーピリドン(II)は二当量のエチルビニルエ-テルと反応し、1:2付加体(III)を与えることがわかった。IIIの構造をIR, ^'H NMR,元素分析などで同定した結果、IIIに環状ニトロン酸エステル構造が存在することが明らかになった。このことよりIIIの生成経路は以下の様であることがわかる。すなわち、最初のビニルエ-テルがIIの環の3位から6位のジエン部へ逆電子要請DielsーAlder付加し、その結果生じたピリドン環4位ー5位のニトロオレフィン部に二番目のビニルエ-テルが再び逆電子要請DielsーAlder付加し、環状ニトロン酸エステル構造を形成したと考えられる。 2.上記1.で得られた環状付加体I,IIIをアルカリで処理し、複分解生成物を単離することを試みた。 (1)α,pージニトロ桂皮酸メチルとビニルスルフィドの付加体、およびシクロヘキセン、スチレンとの付加体などはナトリウムエトキシドのような強アルカリと処理すると分解はするが、目的の複分解生成物は得られなかった。(2)ジニトロピリドンIIとエチルビニルエ-テルの1:2付加体IIIはアルカリ処理により、好収率で目的の複分解生成物が単離できた。
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