研究概要 |
本研究は代表的な非ベンゼン系芳香族炭水素化合物である1,6ーメタ[10]アヌレンの臭素化物およびトリフラ-ト誘導体から新しい反応性炭素陽イオン中間体1,6ーメタノ[10]アヌレンー2ーイルカチオンを種々の反応条件下で発生させるとともに中間体陽イオンの構造と反応性について、実験化学および理論化学の両面から考察を行うことを目的とした基礎的研究である。 1.半経験的MO(MNDO)法を用いた理論計算の結果によると1,6ーメタノ[10]アヌレンー2ーイルカチオンはフェニルカチオンに比べて33.8kcal/molだけ安定化されており、陽電荷が局在化した1ーナフチルカチオンと異なり陽電荷が10pi電子系上に非局在化した炭素陽イオンであることが明らかとなった。 2.アヌレン臭化物の質量分析によりアヌレニルカチオンは気相で発生できることが明らかとなった。 3.アヌレン臭化物から誘導して合成したトリフラ-テのTFE中におけるソルボリシス反応の結果、溶媒と置換反応生生物が得られたが、生成物が反応条件下で不安定であるために複雑な分解生成物を与えることが明らかとなった。 これらの結果はIUPAC物理有機化学国際会議(1990年8月、ハイファ)および第10回基礎有機化学連合討論会(1990年10月、つくば)において発表した。現在イスラエルのApeloig教授の研究グル-プ、イタリアのSperanza教授の研究グル-プ、及びドイツのSchwarz教授の研究グル-プとの共同研究に発展しつつある。
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