研究概要 |
培養細胞にその細胞が本来生産しない物質を投与するとその細胞は物質の構造を認識し,潜在する物質変換機能を誘発して,立体特異性および鏡像体選択性に優れた分子変換を行なう。そのような機能を物質合成に活用するための基礎研究として、そのような反応に関与する酸素系を分画・精製して反応の立体化学を解明した。 1.エノン系化合物の生物変換における培養細胞の還元機能を明確にするために,ベルベノンの炭素-炭素二重結合の還元に関与する酸素系を分画・精製し,その酸素の特性を調べた。この酸素はカルボン還元酸素の場合とは異なって,カルボニルのβ位に水素原子を持たないエノン類の炭素-炭素二重結合も還元することがわかった。さらに,この酸素による反応の立体化学を^2Hで標識した補酸素を用いて調べ,カルボニル基のα位についてはre面から媒質の水の水素が,β位についてはre面からNADPHのpro‐4s水素がsyn付加の様式で立体特異的に付加されることがわかった。 2.タバコ培養細胞はモノテルペン炭化水素類の炭素-炭素二重結合およびそのアリル位をエポキシ化および水酸化する機能を持つことがわかった。そこで,エポキシン化に関与する酸素系のタバコ培養細胞から分画・生成した。この酸素は,ピネンなどの炭素-炭素二重結合のエナンチオ面を認識してそのre‐reから酸素原子を付加する反応を触媒することがわかった。
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