石灰石(CaCO_3)の海水への溶解は、海水のpHを変えることなく二酸化炭素(CO_2)の海水への吸収量を増大させうる。しかし、表面海水がCaCO_3に関して過飽和であるため表面海水にCaCO_3が溶解するはずがないと、今日まで考えられてきた。しかし、CaCO_3に関して表面海水が過飽和であるのは、CaCO_3の表面海水への溶解の結果であるという、今までの考え方とは全く逆の発想から本研究を実施した。 東北〜中国地方の各地点で、表面海水の溶存炭酸過飽和度の測定を行い、朝ー昼ー夕ー夜の日変化および夏ー秋ー冬の季節変化の様子を観測した。その結果、海水の溶存炭酸過飽和度の変化は大変大きく、海水の溶存炭酸許容過飽和度がなお一層高いことが明らかになった。次に、室内実験においてCaCO_3に関して過飽和である表面海水がさらにCaCO_3を溶解しうることを確認し、海水の溶存炭酸過許容飽和度の測定を実施した。その結果、大気CO_2濃度が高いほど、海水の溶存炭酸過許容飽和度が高いことも分かった。 それゆえ、CaCO_3の海水への溶解に伴う大気CO_2の海水への吸収が全く考慮されてこなかった、大気CO_2濃度に関する各国の政府機関や研究者の将来予測においては大きく見積もり過ぎている可能性が大きく、「Problem of missing sink」と呼ばれるCO_2の吸収源問題の解明においても海洋が担っている可能性が大きくなってきた。
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