研究概要 |
二年目にあたって、本研究課題を遂行するため具体的にはふたつのテ-マに取り組んだ。ひとつはドデカノイルLーアラニン界面活性剤の形成するコレステリック液晶へのコバルト(III)錯体存在の効果を59ーCoNMRにより調べた。この系に対してCo(NH_3)_6^<3+>,Co(CN)_6^<3ー>,Co(en)_3^<3+>,Co(acac)_3,Co(phen)_3^<3+>などの錯体の添加が液晶相の安定性に及ぼす影響を錯体の59ーCo NMR、水の2HーNMR、界面活性剤の1HーNMRスペクトルの核四極子あるいは双極子相互作用による分裂から調べた。また液晶相の安定性を測る指標として、液晶のコレステリックのピッチをレ-ザ-光散乱から測定し、ピッチの大きさ(ミセルの大きさと比例する)に及ぼす影響を調べた。液晶を構成する界面活性剤の1HーNMRスペクトルの双極子分裂とコレステリックのピッチの大きさとの良い対応がつけられた。更にこの界面活性剤を含む混合液晶系についてコバルト(III)錯イオンの選択的結合を調べている。 もうひとつ、上記の課題と密接に関連しており、本科研費で購入したDSC(示表走査熱量計)を用いて行った研究は、金属イオンまたは金属錯体と液晶系との相互作用の液晶の相挙動に及ぼす影響についてである。即ち、具体的にはリン酸ジブチルアルカリ金属塩の水溶液の形成する液晶の等方相への転移熱を測定し、アルカリ金属対イオンの効果を調べた。その結果、ナトリウム塩の熱量変化が最も大きくてカリウム塩とセシウム塩とがほぼ同様であった。また、濃度が高くなると次第に熱量変化が大きくなり、転移熱も上昇したが、ナトリウム塩の場合だけは15mol/kgの高濃度になると再び転移熱は小さくなり、転移温度も下がって液晶相が不安定になるという異なった傾向を示した。水の2ーH NMRスペクトルの測定から液晶の秩序性と水和の程度が予測され、ナトリウム塩の場合の小さな核四極子分裂がリン酸基よりはナトリムイオンへの強い水和に帰せられると結論された。
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