研究概要 |
16員環クラウンチオエ-テル錯体transーMo(N_2)_2(synーMeg〔16〕aneS_4)とPhNCOとの反応でtransーMo(η'ーO.CーPhNCO)(η'ーC,NーPhNCO)(synーMeg〔16〕aneS_4)(1)を合成した。1のXー線構造解析はsyuーMeg〔16〕aneS_4の環炭素に囲まれた立体化学的に混んた軸配位座にPhNCOが選択的にC=0結合で,一方反対側の軸配位座にC=N結合で配位していることを示す。この立体化学的に異なる軸配位座でのPhNCOの2種類の官能基の識別の要因は理論計算の結果立体的因子に基づくことが判明した。すなはちモデル化合物transーMo(HNCO)_2〔synー(SH_2)_4〕の4つの可能な異性体についてのEHMO計算はtransーMo(η'ーC,NーHNCO)_2〔syuー(SH_2)_4〕が最も安定であり,Xー線構造のtransーMo(η'ーO,CーHNCO)(η'ーC,NーHNCO)〔synー(SH_2)_4〕にくらべて3.6kcal/mol全エネルギ-が低い。一方分子力場計算(MOLBD3)はtransーMo(η^2ーC,NーPhNCO)_2(synーMe_8〔16〕aneS_4)の全歪みエネルギ-は混んだ軸配位座側のη^2ーC,NーPhNCOとaxialCH_2,水素原子の立体反揆のためtransーMo(η'ーO,CーPhNCO)(η'ーN,CーPhNCO)(synーMe_8〔16〕ーaneS_4)にくらべて12.3kcal/mol大きい。なおtransーMoL_2(synーMe_8〔16〕aneS_4)(L=N_2,CO,PhNCO)のMo原子はpyramidalな歪みを示すのに対して,1では混でいない軸配位座側のη^2ーC,NーPhNCOとMoのdπーPπ^*相互作用を出来るだけ大きくするようにtetrahedral方向に歪んでいる。この事実はクラウンチオエ-テル配位子は柔軟な配位子であり軸配位子の立体的,電子的性質に応じて中心金属の性質を調節し得ることを示す。現在軸配位子識別におよぼすクラウンチオエ-テルの環員数の効果を調べるためMe_4〔14〕aneS_4とMe_6〔15〕aneS_4のMo窒素錯体を合成している。なおこの環員数効果はtransーRuH(cl)L(L=Me_4〔14〕aneS_4,Meg〔16〕aneS_4)においてピドリドと塩素配位子が14員環クラウンオエ-テルでは完全に識別され,立体的に小さいヒドリド配位子が混んだ軸配位座で選択的に結合するのに対して,16員環クラウンチオエ-テル錯体では可能な2つの幾何異性体の2:3混合物となることから明らかにした。
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