研究概要 |
近年私は図1に見られる積層立方体型酸化物クラスタ-[(RhCp^*)_4V_6O19](1)を合成した.クラスタ-1は両親媒性で中性の水非水溶媒中で安定であるが,酸性水溶液中ではpH3.8付近から(RhCp^*)^<2+>基の解離が起り始める。図ー2に20℃における重水中での ^1HNMRスペクトルのpH依存性を示す,クラスタ-1ではCp^*基のメチルシグナルがδ1.23に現われる。溶液の酸性度を増すにつれて1の信号強度は減少し高磁場に新しい4種類のピ-クが現われる。さらに低いpH領域(pH1ー1.6)ではこれらのシグナルはδ1.03に収束する。そして,この収束したシグナルは解離した有機金属基〔(RhCp^*)(D_2O)_3〕^<2+>であることを別の実験で確認した。これらのことはクラスタ-1が酸性条件でプロトン化を受け,H_<2n>〔(RhCp^*)_<4-n>V_6O_<19>〕を生成していることを意味している(式1)。〔(RhCp^*)_4V_6O_<19>〕+2nHBF_4【double half arrows】H_<2n>〔(RhCp^*)_<4-n>V_6O_<19>〕+n〔(RhCp^*)(H_2O)_3〕(BF_4)_2(式1)この解離反応を利用してクラスタ-骨格上での有機金属基の置換反応を試みた。クラスタ-1を含むpH3.8の水溶液に〔IrCp^*(H_2O)_3〕^<2+>を加えることによって〔(RhCp^*)_<4-n>(IrCp^*)_nV_6O_<19>〕(O【.Itoreq.】n【.Itoreq.】を生成させることが出来た。反応混合物はシリカゲルカラムによって分離精製し,n=1のものは単結晶X線解析を行った。
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