研究概要 |
マメ科植物に、根粒菌感染により形成される根粒内での根粒菌窒素固定能発現は、植物と菌の双方の特異的遺伝子誘発により成立する。このうち、菌側の遺伝子発現誘発に関わるシグナルの本質を明確にするのが本研究の目的である。 本年は宿主植物の根から分泌される2次代謝産物や、合成フラボノイド類により根粒菌の根粒遺伝子(nod gene)クラスタ-中のnodD,ABC(common nod gene)の発現機構について検討した。nodDはconstitutiveに発現しており、このnodD産物とフラボノイドが結合することにより、nodのプロモ-タ-が活性化され、その結果nodABCが発現する系を指標として用いた。 まず、クロ-バ菌(Rhizobium leguminosarum bv.trifolii)のnod geneの発現のレベルをβーgalactosidaseの活性で表すため、nodA::lacZfusion plasmid(R.l.trifolii ANU 845のpRt032上のnodAの下流に、E.coli由来のlacZ遺伝子,βーgalactosidaseを組み込んだfusion plasmid)をR.l.bv.trifolii 4SのSym plasmid欠落株,Hl株に転移させ、4種のフラボノイド(4',7ーdihydroxyflavone,DHF;luteolin;apigenin;7ーhydroxyflavone,7ーHF)による発現誘導のレベルを測定した。その結果クロ-バの芽生えより抽出されたDHFが5.0μMで強い誘導活性を示した。さらに、菌の培養時にフラボノイドを添加すると、菌体内のペプチド産生に質的・量的異変の生ずることを2次元電気泳動法(pI,SDSゲル)にて確認した。また、植物側の現象として菌感染初期段階での感染糸形成におけるフラボノイド添加の及ぼす効果を検討し、DHFのわずか0.05μMにより促進効果が表れることをつきとめた。 次年度はnod geneの他の領域の遺伝子の発現についても検討したい。
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