研究概要 |
根粒菌の保有する根粒形成遺伝子(nodーgene)の所在は、クロ-バ菌やアルファルファ菌などのような生育の早いfastーgrowing rhizobiaでは巨大plasmid(Symーplasmid)上に存在するが、ダイズ菌のような生育の遅い菌群slow growing rhozobiaでは主染色体上に存在する。本研究に用いたクロ-バ菌Rhizobium leguminosarum bv.trifoliiはSymーplasmid上に存在している。このnodーgeneの14kb Hind II断片をpKT240に挿入し得られたpRt032を、野生株R.l.bv.trifolii 4S株よりSymーplasmidを除去した菌(H1株)へ移入して得られた感染可能菌Hltl株をnodーgene発現のシンプルな系として用いた。更に、pRt032のnodA promoter下流にE.coli由来のlacZとTn5とを含むfusion plasmidをtriparental mating法にて移入したH1(nodA::lacZ)株を作成し実験に供した。 クロ-バの芽生えをH1(nodA::lacZ)株及びXーGalを含む寒天平板上に置くことにより、植物からのnodーgene遺伝子誘導シグナルが分泌されると、植物根の周りが5ーbromoー4ーchloroー3ーindoleの遊離のために青色を呈することを確認した。マメ科植物根から分泌されると考えられている4種のフラボノイド:4',7ーdihydroxyflavone(DHF);apigenin;luteolin,7ーhydroxyflavone(7HF)をH1(nodA::lacZ)株に添加し、nodーgene発現に及ぼす影響について有効農度を測定したところ、4種とも5μMで最高の酵素活性を誘導した。更に、感染菌Hltl株を用い、クロ-バ感染系にDHFを添加し、根粒形成及び感染糸形成への影響を見た。その結果、0.05μMのDHF添加で感染糸形成へマイナスに影響していることが判明した。このことは、植物が直接分泌する物質の中には、単一の物質だけで感染糸形成に有効に働くものはなく、分泌された物質相互の微妙な複合作用があるため、DHF添加によりあるバランスの崩壊を招き、阻害の方向に向かったものと考えられる結果を得た。
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