研究概要 |
アフリカツメガエルの卵抽出液は外来性の2本鎖DNAを鋳型として授精卵と同様のDNA複製を触媒することが知られていたので、本年度はこの系を利用して下記(1)(2)について解析した。(1)DNA複製開始部位の検索,カエルの卵無細胞系で種々のDNAを鋳型としてDNA合成を行わせて、それぞれのDNAのDNA複製効率を調べた結果、DNAの種類によって、また、同一のDNAでも制限酵素で切ったDNA断片によってDNA複製効率に著しい違いがあることが判明した。また、複製効率の悪いDNA(M13RF DNA等)でも効率の良いDNA断片(ラムダDNAのHindIIIの2.3kb断片等)を挿入した組み換えDNAでは複製効率が高くなることを見いだした。これらのことからある特定の塩基配列を持ったDNA部分が複製開始部位として機能とていることが示唆された。さらに、複製効率の良いDNA(φ×174RF DNA等)を詳細に調べた結果、複製開始部位はこのDNA上に数キロ塩基長に1個程度の頻度で存在することを見いだし、現在まだ同定はされていないが、5ー6塩基長の特定の塩基配列が複製開始に必須であることを示唆した。(2)複製開始部位に作用して複製開始を決定している因子(複製開始因子)の解明。φ×174RF DNA、DNAポリメラ-ゼ、DNAヘリカ-ゼ等より構成されたDNA合成再構成系を作製し、この系を用いて複製開始因子の検索を試みた結果、分子量6万のある蛋白質が複製開始因子としてカエル卵抽出液よりカラムクロマトグラフィ-により分離された。現在、この蛋白質の諸性質を調ぼているが、この蛋白が(1)のDNA複製開始部位を認識しているらしいことが明らかになりつつある。今後、この蛋白質を詳しく解析することにより動物胚発生におけるDNA複製開始部位の可塑性の明解な解明が期待される。
|