研究概要 |
ウナギの腸におけるNaClの水の吸収はセロトニン(5ーHT)、アセチルコリン(ACh)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)によって抑えられる。ANPの効果は、8BrcGMP処理後にはみられないことから、cGMPを介すると考えられる。また5ーHTの効果は細胞内のcAMP濃度を高めると減少することから、cAMPを介するものと思われる。しかしAChの効果については、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を伴うらしいことは解っているが、それだけでは総てを説明できない。一方電気刺激によってもイオンの吸収が一過性に抑制されるが、その効果の内70%は神経終末部からの5ーHTとAChの放出に依って説明できた。残りの30%は未知の因子の放出によると考えられる。 未知の因子を探す目的で、ウナギの腸をすりつぶし、生理活性物質の探索を行ったが、現在のところ、アセトン抽出物からウナギの消化管の平滑筋の収縮を増強するペプチド(EIPP,HーGlyーPheーTrpーAsnーLysーOH)を同定したのみである。最近水抽出物中にイオンの吸収を抑える物質を見つけているが、現在精製途中である。 これまで見つかっている因子は、総てNaClと水の吸収を抑えるものであったが、アドレナリン(AD)が吸収を高める効果のあることが解った。海水ウナギの腸にADを単独投与しても、イオンと水の吸収量は殆ど変化しないが、5ーHTとAChによって吸収を抑えた後にADを与えると、イオンと水の吸収は顕著に増大し、元に復す。このADの効果はα_2ー受容体を介するものであり、細胞内cAMPとCa^<2+>濃度が高まっている状態でのみ見られた。またこの効果はオカダ酸によって一部抑制されることから、ADはPhosphataseを活性化するものと考えられる。しかしANPによって吸収を抑えた後にはADの効果は全くみられなかった。
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