気相からのダイヤモンド成長法は、そのほとんどが比較的高い圧力下でのCVD法によっている。そのため気体原子および分子間の相互作用が大きく、成長の素過程の解析は困難であった。そこで比較的低い圧力での成長を試みる事がこの研究の主目的である。 黒鉛を真空中で蒸発させると、炭素原子と共にそのクラスタ-が多量に蒸発する。このクラスタ-の存在が結晶性の黒鉛及びダイヤモンドの成長に悪影響を及ぼす事が"原子蒸着法"の基礎実験で明らかになった。しかし、炭素原子を安定して蒸発させる事はかなり困難であり、この実験を再現性良く行うには基本的な技術の改良が要求される。基本的には炭素原子がダイヤモンド成長の主要な活性種である可能性が大きくなった。 メタンー水素系で、比較的低圧である0.01Torr付近の圧力でCVD法を試みた。気体分解には2000C程度に加熱されたフィラメントを用いた。成長速度の極端な減少は見られるが0.01Torrまではダイヤモンドの成長が認められた。 気体温度を2000C程度であると仮定して、フィラメント付近での気体種を求めた。水素分子、水素原子、炭素原子の生成が大きく、その他のラジカル等の量は非常に少なかった。この気体温度における上記の気体種の平均自由行程を求めると、それらは下地とフィラメント間距離(〜1mm)の数倍から10倍程度であった。従って、これらを考え合わせると、水素原子及び炭素原子はほとんど衝突なし下地に到達すると思われ、"原子蒸着法"の結果とも一致している。 成長速度を無視すれば、成長温度の低温下は可能である。現象としては、水素原子の成長表面からの脱離に関係している。水素原子による引き抜き反応を利用した低温下は今後の課題となるであろう。
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