(1)主に介護を必要とする高齢者や自宅療養者を対象にした実用化モデルを、開発に参画する生産者と共に設計試作を行う。身体を保持し、操作をする座位保持部、操作部を成形合板によって構成し、移動の機能と性能を保証する部分には金属等工業材で構成し、素材の選択を部位別に明確にした。この結果、移動の性能、信頼性が向上し、部品の生産、組立方法に合理性が加わった。昨年度と同様に老人保健施設で高齢者による試乗テストを行った。その結果、寸法的に若干の改良点が認められたが、おおむね実用に値する事が判明した。 (2)開発に参画する木材成形メーカーの製作による、ユリア樹脂接着剤を用いた実用レベルの木材成形試験片の材料強度試験を従来と同様の試験項目で行った。その結果、過去2年のデータより強度は向上し、ばらつきも減り、信頼性が向上した。有限要素法による木材成形フレームの形状と強度の関係解析を、解析容量の点から東北大学機械知能学科所有の「構造解析用汎用プログラムMARC」を用いて行った。着座動作を基に3段階の動的負荷を与えた。その結果、木材成形フレームは顕著な異方性をもちながらも、最大の強度を持つ繊維方向に主たる応力がかかり安全領域にある事が判明し、木材成形フレームの形状、寸法は理に適っている事を証明した。 (3)地域で個別生産が可能な生産手法に結び付ける為に、車いすのオーダーメイドの考えを、木材成形部品、金属部品の大、中、小の3レベルの寸法変化で応える事に置いた。地域はそれを入手し、地域の作り手が、地域の個々の障害者に組立、応える手法を提示した。 (4)法的な認可や、長期的な使用による人間の使用上の特質、環境機能上の評価は今後の課題であるが、目的とした車いすの木製化という当面の研究目標は達成された。
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