研究概要 |
自力操作可能な車いす使用対象者として、仙台市内の自宅から福祉工場に車で通勤している男性(40才,せき損)を選び、自宅の使用環境,身体寸法,身体能力及び本人の要望を調査し、自宅内で使用可能な車いす仕様を設定した。仕様の主な点は、軽さを感じさせる重心位置とフレ-ム寸法の設定,圧力分散機能を持つテンパ-フォ-ムの座面への内装,屋内の移動に適したハンドリムの形状と取付方法の設定等である。 以上をもとに設計,試作を行ない、使用対象者の自宅で約2ケ月間の使用テストを行ない問題点を抽出した。その結果、成形合板による木製フレ-ム部には構造的欠陥は見られなかったが、キャスタ-部,フットレスト部等,金属部品との接合部に欠陥が見られ、要素設計に課題を残した。寸法的には、身体的な面,テ-ブル,トイレ,風呂,ベッドといった室内の設備との適合性の面,両面で良好な結果を得た。反面、インテリア性は良いが、使い慣れた金属性車いすに比べ能動的でなく、心理的に重いとの評価を受けた。 一方、成形合板技術による木装フレ-ム部材の金属製パイプフレ-ム部材(sus,鋼,AL)との強度比較試験を行った。試験項目は、JISにもとづいた引張,圧縮,曲げ,ぜん断,割裂テストと,L型部材の加圧角開き,加圧角曲げ,T型接合部材の曲げテストであった。その結果、木製フレ-ムは、30^<mm>×30^<mm>(板厚1.5mmのブナ単板を20枚積層)断面であれば金属製パイプフレ-ム(ψ22^<mm>,sus)より強度が高く,24^<mm>×24^<mm>では低いことが判明した。有限要素法による静的、動的解析は現在継続中である。 以上の開発の結果、木製車いすは主に介護を必要とする高齢者や重度肢体不自由者に要求が高く実現性があるとの感触を得た。今後この方向で、実用化に向けた開発を進める予定である。
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