研究概要 |
萌芽的研究としてSTM・AFMーTribologyの研究が行われた.これはSTM・AFMをトライボロジ-の基礎研究に導入することにより,これまで未開拓であったナノメ-タ・オ-ダのトライボロジ-の基礎を確立することを目的とするものである.現段階においては,ナノメ-タ・オ-ダのトライボロジ-の最も基礎となりうるナノメ-タ・オ-ダでの接触に伴う微少凝着力及び微少変形について興味深い知見が得られている. 1.ナノメ-タ・オ-ダの接触面における凝着力 表面間に働く相互作用力(引力,斥力)に起因する力が,摩擦時に発生する凝着力と呼ばれるものである.接触面下の塑性変形やぜい性破壊を考えるようなマクロな接触においては,この凝着力は無視することが可能である.しかし,ナノメ-タ・オ-ダでの接触を考える場合,この凝着力が摩擦力を決める重要な問題となってくる.そこで,この凝着力の機構解明を目的として,STM,AFMを用いた,表面間力カ-ブの測定が行われた.また,原子間の相互ポテンシャルに基ずいた理論モデルによって,この凝着力のメカニズムの説明が行われた.これは新しい摩擦の原子論を論ずる上で必ず重要となるものと考えられる. 2.ナノメ-タ・オ-ダの接触面における微小変形量 ナノメ-タ・オ-ダの摩擦機構及び加工を考える基礎として,原子レベルでの接触における微小な変形は,非常に興味深く,重要な問題ある.これに対し,STMの触針を直接試料表面に押し込む新しい方法により微小な永久変形量の測定が行われた.これにより200nmまでの押し込み量と永久変形量の間に比例関係を得た.これは,材料力学における,応力ーひずみ曲線に対応するナノメ-タ・オ-ダでの初めての変形曲線である.この類の曲線は,ナノメ-タ・オ-ダでの摩擦,加工を論ずる上で,必ず重要となるものと考えられる.
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