本研究では、近年開発が進められている超伝導電力機器において、より高性能な電気絶縁設計を実現するための基本的指針を得ることを目的に、これまで検討例のない有極性高分子の極低温用電気絶縁材料としての可能性に着目して、それらの極低温電気絶縁特性を部分放電などの二次的効果の介在しない状態で正確に把握することを中心に検討を進めた。以下に、本年度の研究成果の主要なものを示す。 1.低温においては、有極性高分子は無極性高分子に比べ高い絶縁破壊の強さを示す。ここでは、申請者が独自に開発した部分放電などの周辺効果を排除可能な新型試料を用いて有極性高分子フィルムの極低温における電気絶縁破壊特性を調べた。その結果、従来のリセス型試料による実験結果では絶縁破壊の強さが極低温で負の温度依存性を示しかつその機構が明らかでなかったのに対し、新型のフィルム試料では、絶縁破壊の強さがほとんど温度依存性を示さない領域も存在することが明らかとなった。これらは従来の常識を覆すものである。 2.フィルムと同じ材料で作成した従来のリセス型試料ではこれまでと同様の絶縁破壊特性を示すことから、この特性の出現には、材料内部のモルフォロジ-が関与していることが明らかとなった。 3.インパルス電圧による絶縁破壊の強さは、新型・従来型の両試料ともにほとんど温度依存性を示さないことが明らかになった。以上の実験結果及び絶縁破壊に対するプリストレス効果に関する実験結果より、有極性高分子の極低温における絶縁破壊には空間電荷が大きな影響を与えていることが明らかになった。
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