冬季の襲雷がきわめて多い石川高専周辺地域において、商用の高圧配電線系統に発生する雷サ-ジ波形と雷撃放電特性諸量とを測定し、研究初年度の段階として次のような成果を得た。 1.雷サ-ジ波形の概要を把握するために、北陸電力・宇の気変電所において、後述の試作検出器と比較して周波数特性がいくらか劣る接地型計器用変圧器(GPT)と零相計器用変流器(ZCT)とを用いて、零相電圧・零相電流の波形をメモリハイコ-ダにより測定した。近傍への雷放電発生時における雷サ-ジ波形と開閉器故障など商用周波事故時の波形の両者が得られ、これらの波形に顕著な差異が認められた。 2.配電線とは無接触の状態で正確な雷サ-ジ波形を測定するために、高帯域の静電容量型検出器を試作した。これを商用の配電線に設置するためには、通常課電時および雷サ-ジ発生時における検出器の絶縁強度を吟味することが必要となる。そこで、今年度はこれらを検証する目的で試作品を奥獅子吼ロケット誘雷実験場の試験用送電線鉄塔に取り付け基礎実験を実施した。結果は誘雷時および自然雷時とも順調に測定波形が得られたが、電圧波形の校正試験と信号伝送としての光ファイバシステムの構築に課題を残した。 3.雷撃放電特性の測定については、(1)直角2方向からVTR観測、(2)多地点針端コロナ電流による地上電界分布図の作成、(3)電圧型雷サ-ジメモリ-による落雷時の電界変化の測定を実施した。特に、対地雷撃地点の標定は配電線雷サ-ジとの関係で重要な因子であるが、12月23日未明に発生した津幡町寺院の落雷火災を撮影した結果から、標定差が10mと求められ本研究の標定方法の正確さが確証された。さらに、雷撃地点は地上電界の正極性と負極性の境界付近、あるいは両極性の混在する地域に存在することが指摘できた。
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