研究概要 |
平成2〜4年度の3年間にわたる研究期間において,冬季の襲雷が多い石川高専周辺地域を対象として,雷撃放電特性諸量と高圧配電線系統に生ずる雷サージの電圧・電流波形とを測定し,次のような成果を得た. 1.針端コロナ電流による地上電界変化の冬季間連続観測から,冬季雷は正極性雷雲からの雷撃が47%,負極性雷雲からの雷撃が36%と,ほとんど同程度の割合で発生することが明らかになった.この特性は,夏季雷において負極性が大半を占めることと比べて,冬季雷の顕著な特徴を示すものである. 2.針端コロナ電流多地点観測から求めた地上電界強度分布と直角2方向のVTR光学観測から標定した対地雷撃地点とを重ねて検討した結果,冬季雷の対地雷撃地点は地上電界の正,負両極性の境界領域に存在しているという極めて特徴的な傾向が見られた.この知見は今後の落雷予知技術の発展に有用であると考えられる. 3.奥獅子吼ロケット誘雷実験及び宝達山無線塔など北陸地方山岳地において冬季雷観測を実施し,上記の平地における雷撃放電特性との比較を行なった.高建造物から進展する典型的な上向き雷放電の特性が得られた. 4.地元電力会社の変電所において,同一バンクから引き出された3箇所の配電線系統を対象として雷放電発生時に生ずる雷サージ波形を実測した.零相電圧・電流の波形を4ch型メモリハイコーダで記録し,対地雷撃地点との関係を検討した結果,雷撃地点に最も近接する配電線に生ずる零相電流波形において、他の電流波形と異なる種々の特徴が明らかになった.実用的な事故判断機能への適用には,今後更に詳しく分析する必要がある。 5.光ファイバリンクを用いた高帯域静電容量型電圧検出器は降雨など気象条件の悪い場合の使用に問題を残したが,正確な雷サージ波形を得るためには是非とも必要であり,今後の研究で改良を図っていく予定である。
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