スパッタイオンガン(平成2年度購入)に次いでアシストイオンソ-ス(イオンテックB13、100ー3650ev)を購入し、真空チェンバ-内に取り付けた。このイオンソ-スの低エネルギ-限界を下げるためにメッシュ電極を取り付けた。基板面へのスパッタ粒子の入射方向やアシストイオンの入射方向および距離を自由にセットできるように工作した。均一高温加熱を得るためにランプホルダ-に反射板を取り付けた。拡散ポンプを大型(6インチ)のものに取り替え、バタフライバルブを設置した。2個のイオンガンを同時に放電させるために、イオンガスや雰囲気酸素ガスの流量とバタフライバルブの開閉調節および放電電圧の調節を行った。1.5keVのArイオンでBi系2212タ-ゲットをスパッタしてBi系の薄膜を作成し、組成転写を調べている。シングルイオンビ-ム法ではタ-ゲットー基板間臨離が近いときは反射スパッタイオンによる成長薄膜の再スパッタ効果のために特にBiの不足が大きい。しかしタ-ゲットー基板間距離を離してこの再スパッタをなくしてもまだBiが不足する。その原因は調査中である。基板温度を上げると成膜速度が下がり、蒸気圧の高いSrとCaが不足していく。成膜中にアシストイオン(Ar)を膜面に照射した結果、再スパッタ効果が現れ、Biが不足ぎみになる。しかしアシストイオンのエネルギ-を1keVから500eVまで下げていくと再スパッタ効果は低減される。500eV以下のエネルギ-については継続調査中である。これらのバランスを考えて、現在タ-ゲット組成を検討している。膜質評価の確立のために、初期に作成した2212薄膜の低磁場非共鳴マイクロ波吸収測定を行った。電気測定では転移温度が77Kであるにもかかわらず、マイクロ波吸収は84Kから始まり、78K付近から急増しはじめた。したがってマイクロ波吸収法は、超伝導パスがつながらないような低質な薄膜でも微量の超伝導相を定量評価できることがわかった。
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