イオンアシストを付加したイオンビームスパッタ法によってBiSrCaCuO系薄膜を作成し、基板温度(Ts)と酸素分圧(P)依存性を調べた。P=1×10^<-1>Torrのとき、Ts=600-700℃ではBiとCuが大きく不足し薄膜は絶縁性であった。その原因はBi_2O_3とCuOの蒸発である。X線回析のピークは認められなかった。P=3×10^<-4>Torrのとき、Ts=600℃では薄膜はCu不足で絶縁性、650℃では薄膜の抵抗率は数Ωcm、700℃ではBi不足のために数十Ωcmであった。X線回析ピークは認められなかった。同じP=3×10^4Torrで成膜中に0^+アシストイオンを照射した場合は、Ts=600℃ではCu不足のために絶縁性、650℃では数Ωcmで、両者にはわずかに2201相の回析ピークが現れた。700℃では数Ωcmで最も導電性が良く2201相の強い回析ピークが現れた。650℃と700℃の薄膜は2212組成に近かった。まとめると、700℃のような高温ではBi_2O_3の蒸発を抑えるためにもっと高い酸素分圧が必要である。しかしアシストイオンは表面マイグレーションを促進して結晶成長を助け、Biを有効に膜内に取り込ませ、活性な酸素イオンによって酸化反応を助長する。アシストイオンを照射した薄膜を800℃でアニールすると、2201相と2212相の回析ピークが現れ、650℃薄膜では2201ピークが強いが700℃薄膜では2212ピークの方が強かった。これらは共に4端子測定によって超伝導転移が認められ、オンセット温度は650℃薄膜では79K、700℃薄膜では91Kであった。アシストイオンを照射しない薄膜は同じアニールをしても同様の転移は認められなかったのでアシストイオンの結晶成長時の潜在的な効果が確認された。今後、酸素分圧とアシストイオンビームの最適化を図れば、in situでの超伝導薄膜の作成が期待できる。
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