研究概要 |
液晶の光刺激伝搬現象を利用し,光情報処理媒体として用いるには,光電荷生成および電荷輸送の二つの機構を解明しておく必要がある。ここではこの二つについての研究実績について述べる。 I.液晶の電荷伝導 液晶の電荷輸送は液晶セルに直流のステップ電圧を印加する事により調べられている。この際に得られる電流波形には一つのピ-クがあり,ピ-クの発生する時間は電圧の逆数に比例する。ところが,我々は,臨界電圧以下でピ-ク発生時間が電圧に比例する現象を見いだした。この現象は液晶・電極界面の抵抗に起因していることを数値計算により示した。さらに,印加電圧停止直後の放電電流波形にもピ-クがあることを初めて見いだし,このピ-クの発生原因が液晶中の不純物イオンであることを明らかにした。 II.液晶の光電荷生成 我々が既に報告した異常過渡光電流(Phys.Rev.Lett.63(1989)555)の振舞いは神経細胞の興奮現象と酷似しておりニュ-ロコンピュ-ティングへの応用が期待できる。この考え方に沿って,まず,異常過渡光電流の成因を理論的に考察した。その結果,これはフレデリクス転移に伴う非線形ポッケルス効果に起因することが判明し,実験結果を矛盾なく説明することができた。さらに,この異常過渡光電流を利用することにより,液晶セルマトリックスを用いたパタ-ン認識が可能であることを示した。
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