本年度は、直接FSK変調時における800nm帯の半導体レ-ザの発振波長の安定化と周波数偏差の測定をRb原子の吸収線を波長基準として用いて行った。今回用いたピ-クホ-ルド方式は、平成2年度までに方形波信号により直接周波数変調を行った際に無変調時よりも高い安定度が達成され、方形波変調パルス信号に周波数シフト量とデュティレシオを変えたときにも高い安定度が達成されている。しかし、方形波信号による直接周波数変調では半導体レ-ザの温度変動効果のために良好なFSK変調が実現できていない。そこで我々が考案した比較的単純な2つの回路を用いることで良好なFSK変調を実現するとともに、この良好なFSK変調時の波長安定化を行った。その結果、当初の予想通り、ピ-クホ-ルド方式では変調が良好なFSK変調に近付くほど安定度の改善が著しく、吸収線の中心を基準として測定した変調条件による周波数安定化点の変動である周波数偏差も小さいことが確認できた。 また、より高い安定度を実現するには通常の吸収分光信号では気体原子の熱運動によるドップラ-幅が存在するため制御信号の感度が不十分であり、飽和吸収分光を用いる必要があると予想されていた。そこでこの飽和吸収分光を用いて安定化を行った。その結果当初の予想以上の安定度の改善が見られ、その改善の度合いは周波数変調などを加えない場合の飽和吸収分光による改善よりも大きく、1桁以上の改善となった。 今回、飽和吸収分光による安定化が実現できたことと新しいFSK変調の方法を開発できたことは大きな成果であったと考える。今後は更に変調周波数を高くするとともに、当初計画していた1.5nm帯ヘピ-クホ-ルド方式を発展させる研究を進める予定である。
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