本研究は、ディジタル衛星通信システムに必須のフレ-ム同期に、従来の"1"と"0"の2値信号(軟判定デ-タ)の代わりに、細かく量子化された信号(軟判定デ-タ)を適用することにより、伝送品質の向上が図れるか否かを追究することを目的としている。平成2年度では、まず、丸めのない(量子化を施さない)軟判定デ-タおよび量子化を施した軟判定デ-タを用いたユニ-クワ-ド検出とフレ-ム同期の方式を確立した。その後、変調方式として絶対符号化されたPSKを想定して、硬判定デ-タ、丸めのない軟判定デ-タおよび量子化を施した軟判定デ-タを、それら方式に適用した場合に得られる各種特性について、ユニ-クワ-ド長、軟判定デ-タの量子化数等を変化させて、詳細な定量的評価を実施した。本理論的解析に関しては、計算時間の短縮を達成する計算アルゴリズムの開発を行い、8ビットまでのユニ-クワ-ドに対する評価が可能となった。これら検討により得られた知見は多岐にわたるが、「量子化の有無にかかわらず、軟判定デ-タを用いる場合、パラメ-タ値の設定に自由度が生じるため、ユニ-クワ-ド検出に関する各種特性の良好なバランスを確保することが可能となり、フレ-ム同期特性が大幅に向上する。」と集約することができる。なお、設備備品として、平成2年度に購入した304Mバイト・ハ-ドディスクは、上記理論計算において取得された多量のデ-タの蓄積・処理に効率的に活用された。ユニ-クワ-ド長の制限を強く受けないDSPボ-ドによるハ-ドウェア上での評価に関しては、設備備品として、平成2年度に購入したパ-ソナル・コンピュ-タを用して、機械語の予備的修得を実施し、プログラムの原型を作成した。本プログラムは、平成3年度に必要となる設備備品(DSPボ-ド)に移植され、長いユニ-クワ-ドを対象とした特性評価に本格的に利用される。
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