本研究は3次元情報を抽出するための画像デ-タの計算の基本原理、および得られた計算結果の評価に対する一貫した理論的枠組みを構築しようという極めて野心的な試みであり、萌芽的研究として申請した。1年間の研究期間中に、点デ-タの共線性、直線デ-タの共点性に関する仮説検定の手法をまとめ、学会論文誌に発表するとともに、国内学会および国際学会で口頭発表を行った。また、その考えをカメラキャリブリ-ションや自動走行車のための3次元道路形状復元に応用し、実際の画像を用いて実験を行った。 今日、ロボティクスの急速な発展に伴い、画像による3次元計測がますます重要な役割を果たしているが、ロボットの制御のためには何よりも高い精度の計測が必要である。しかし、画像は照明条件や各種のノイズによって劣化しやすく、またディジタル画像では離散的な画素からなるという解像度の限界が存在する。従来は誤差を減らすための工夫を個別に提案しては、その結果を計算機シミュレ-ションや実デ-タによる実験によって主観的、経験的に評価していた。しかし、今後の発展のためには誤差やノイズの数学的モデルをたて、それに基づいて誤差を最小にする最適推定法、およびそのようにして得られた最適推定値の信頼性の評価が体系的に行える数学理論が不可欠である。 本研究はこれに部分的に答えるものであるが、まだ不十分である。現在、より精密な誤差モデルに基づいた理論的評価法を検討中であり、見通しは大変有望である。期限切れで、本研究期間に完成できなかったことは残念であるが、萌芽的研究としては十分なスタ-トであったと考えている。今後も本研究をその方向で継続する予定である。
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