水中に構築される粒状体構造物の地震時の安定性や動的挙動を模型実験で検討するためには模型内部で進行する変形、破壊を的確に把握する必要がある。このため研究代表者等はLAT(Laser-Aided Tomography)という新しい可視化実験法を開発した。これはガラス粒子を積んで作った3次元の粒状体構造模型を同じ屈折率の液体に浸し透明にしたうえで、ここにシート状のレーザー光を透過させ、ガラス表面での光の散乱を利用して断面上のあらゆる粒子の形状と動きを観測するものである。粒子が粗ければ全ての粒子の輪郭と他の粒子との接触状況を容易に観測することができる。粒子が細かい場合には粒子個々の形状の可視化は困難になるが、ガラス粉末を格子状に模型内部に挿入することで容易に三次元の変形観測が可能になり、またレーザーの散乱光を利用して内部に埋められた構造に生ずる応力の可視化も可能であることが示された。 この手法を用いて粗粒からなる堤体模型の振動破壊実験を行った。振動台の加速度がある敷居値を越えると、堤体斜面の滑落が急速に進行するが、この加速度の値は振動数が高いほど大きくなる傾向が認められた。これは従来の設計で取り入れられている乾性摩擦の概念だけでは説明できない現象である。この機構を検討するため、離散楕円要素法を用いて、楕円粒子あるいは円形粒子からなる堤体構造の破壊シミュレーションを行った。その結果、これらの構造の破壊に粒子の回転と粒子間の滑りのそれぞれが占める割合が、破壊過程とその周波数依存性に与える影響が大きいこと、粒子の形状とその骨格構造によってそれらの割合は大きく影響を受けることなどが示された。
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