研究概要 |
本研究の目的は,まず地震動によるエネルギ-が構造物の質量の運動エネルギ-や部材のポテンシャルエネルギ-として入力され,粘性や履歴復元力特性によって吸収されて行く,エネルギ-分担の過程を明らかにし,さらにこの概念を用いて,終局耐震設計法の新しい枠組を提案し,実用化への基礎資料にしようとするところにある。 本研究の初年度である平成2年度においては,次に示すような研究成果を得た。 1.線形多自由度振動系にモ-ダム解析手法を適用し,新たに作成したエネルギ-スペクトル図を用いて,各次振動モ-ドにおける地震入力エネルギ-の評価手法を新たに開発した。各次モ-ドのエネルギ-の総和は,厳密解として求められ,これを用いて多自由度系のエネルギ-分担率の評価が可能となる。 2.橋梁の桁構造と橋脚の連結装置である支承部の構造として,ピン結合,弾性支持,粘弾性支持,バイリニア型履歴復元力支持を採用した場合の,構造全体系の地震応答断面力とエネルギ-分担率を,数値シミュレ-ションにより算出した。その結果,ピン結合以外では,低剛性の支承利用により,地震応答断面力を低減できること。しかし変位応答をも同時に低減するには,支承部でのエネルギ-吸収が不可欠であることなどが判明した。 3.高減衰ゴム免震支承を有する構造物のハイブリッド地震応答載荷実験の結果,地震応答時の等価減衰定数は,単純繰り返し実験時のそれよりも若干小さくなること,履歴復元力特性はバイリニアモデルで,変位・加速度応答ともに精度よく再現できることが判った。 4.構造物の振動エネルギ-と制振力のエネルギ-の和を最小とする規範で,最適ハイブリッドコントロ-ルのアルゴリズムを開発した。
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