研究概要 |
異方圧密された粘土を,圧密時の異方応力状態から出発してせん断した場合に発生するすべり線は,軟弱地盤が現場で破壊するときに生じるすべり線と力学的に同等である。これを室内試験によって観察するため,中空円筒ハダカ供試体を用いた3軸試験を考えた。平成2年度は実験がスム-ズに実施できることを確認するために,中実円筒供試体を用いて一連の実験をとり行なった。中実円筒供試体は中空円筒供試体とくらべて応力コントロ-ルの余地が小さい反面,実験装置が簡単で安定した実験結果が得られる。平成2年度は,異方応力状態を保存するための特殊なコンテナ-を装着した実験装置を作り,異方応力状態から確実に実験がはじめられるようにした。一連の実験結果によれば、その成果は予想された通りであり,特に重大な支障もなく所期の性能を装置は発揮していることがわかった。次いで,供試体内に発生する負の間隙水圧を測定するために特殊な用途に用いられるセラミック・ディスクを装置内にくみ込んだ。真空ポンプを用いてセラミック・ディスクを含む間隙水圧測定系列内のエア-・バブルを除去することにより従来測定が難しいとされていた負の間隙水圧の測定が精度よくとり行なえることが確認された。このような新しい測定上の工夫をこらしたのち,異方圧密された粘土を圧密時の異方応力からせん断状態に供することを行なった。海成自然滞積粘土とやきもの用の九谷粘土を試料として用いた。せん断初期に発揮されるせん断抵抗がピ-クを迎え,破壊状態に達したのち,せん断抵抗が徐々に低下する。いわゆる歪軟化状態ですべり線の発生がみとめられた。実験後供試体を乾燥し,すべり線の分布状態について詳細に調べたところ,中実円筒供試体においては供試体中心部に弾性クサビに似た円錐状の部分が発生し,自由なすべり線の発達が阻げられていることがわかった。
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