研究概要 |
円柱形に切り出した粘土の供試体を軸方向に圧縮すると,何本ものすべり線の発生を経て破壊に至る。このすべり線の発生が,マスとして見た土の破壊を意味することは随分と昔から認められている。土圧・支持力・斜面安定といったすべり線解析・円弧すべり解析などの基礎である。この時,材料の強度を予め知っておく必要があるのだが,多くの場合,例えば一軸試験をして求めている。ところが一軸試験自体でも,せん断に伴って複数のすべり線が発生し,その結果としての強度を求めているのに他ならない。一軸供試体自身も境界値問題の対象となっているわけである。ここに論理の矛盾がある。ストレ-トに土の変形・破壊現象を捉えようとすれば,供試体に発生するすべり線の発生機構を理解する必要がある。室内試験供試体をエレメントと捉えず,境界値問題とするアプロ-チである。ここでは軸対称供試体に生成するすべり線を観察・整理した。コンテナ内でKo圧密した後,供試体の変形を拘束して(有効応力が変化できないようにして)コンテナを引き下げ,非排水せん断を行うという機構を備えた三軸装置を使用した。供試体は中実の軸対称と中空軸対称の2通りを用いた。解析の都合上,中心軸の特異点を除去したいのと,圧密時には短い排水距離(コンテナと供試体との摩擦の影響を軽減),せん断時には高い供試体(端面摩擦の影響を軽減)を実現したいため中空供試体を用いた実験を行った。この装置の特徴は,1)供試体をKo圧密できる,2)供試体をハダカのままで(ゴムメンブレンを用いない)せん断できる。そのためすべり線の生成・発達を観測できる。3)但しこの時,負の間隙水圧を測定できるように,セラミックディスクを用いた間隙水圧測定システムを組み入れている。従って、有効応力による整理ができる。応力とひずみに関して,ひずみ軟化は見かけの現象であることを証明した。供試体の壊れ方が重要なのである
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