研究概要 |
地球規模の環境変動が重要課題となっている近年,防災や水利用の観点だけでなく,相変化を伴う水の時空間分布が地表面エネルギ-収支に及ぼす影響の評価は環境変動のメカニズムの解明や制御の観点からも重要である。本研究では,アジア高山地域での雪面熱収支モデルの開発のための基礎研究として,低温・強風環境下にある富士山を対象に,厳しい環境下での融雪量・気象要素の観測手法の開発と観測,風洞実験による同地域の融雪特性の理解,高山地域での融雪量の時空間分布特性を反映しうる分布融雪量算定モデルを開発を目的として以下の研究を行なった。 1)融雪量および気象観測 5〜6月に富士山北斜面(吉田側)の3400m・2900m・2300mの3地点に,気温計・湿度計・風速計・日射量計・放射収支計・アルベド計を搭載したプラットフォ-ムを設置するとともに,週に1度の融雪深・雪密度の観測を実施して,斜面融雪量を計測した。また,低温・強風の厳しい環境下において省電力での作動を目的として試作したカメラ方式の積雪深計の現地適用実験を行ない,その有効性が示された。 2)風洞実験による融雪現象の理解 長岡技術科学大学恒温室にて風同実験を実施し,融雪に与える顕熱・潜熱交換特性を検討し,風速が増加した場合のバルク法の適用性の問題点を解明した。 3)融雪モデルの構成と融雪現象の比較 低温・強風下での顕熱・潜熱・放射フラックスを表現するモデルを構成し,その適用性を検証するとともに,低地部との比較により富士山地域での熱収支特性を明らかにした。
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