研究概要 |
地球規模環境問題に関連して近年注目されている環境中でのメタンガス発生量の推定に関して、その基礎となるメタン生成細菌の実環境での生態が十分に解明されていないことが問題視されている。本研究は、このような状況を克服してより正確にメタン生成細菌の存在状態を把握するために、遺伝子工学における新しい研究手法を用いて、環境におけるメタン生成細菌の計数方法の確立を目的として開始された。 初年度に当たる平成2年度においては、まず湖沼底泥のメタンガス発生ポテンシャルが、湖沼底泥の温度や有機物含量によってどのように変動するかを調査した。その結果、湖沼底泥に枯死水性植物が供給される周期後半においてメタンガス発生ポテンシャルが高まることが知られた。また、湖沼底泥に生息するメタン生成細菌の分離培養を試み、水素資化性メタン生成細菌(球菌)数株の集積培養に成功したが、まだ他の細菌の混入がみられ、完全な純粋分離には至っていない。このため、ドイツの微生物保存期間(DSM)に寄託されている純粋分離メタン生成細菌4株 (Methanobacterium formicicum,Methanobacterium thermoautotorophicum,Methanosarcina barkeri,Methanothrix soehngenii)を用いて、それらから16Sリボソ-ムRNAを抽出回収するための菌体の大量培養を行なった。大型バイアルを用いる方法を新たに開発し十分量のメタン生成細菌体が得、塩基配列決定実験に供するうえで十分量の16Sリボソ-ムRNAを抽出することが可能であった。 今後は、それらの回収RNAを用いて塩基配列を決定し、それに含まれる特定のメタン生成細菌に特異的な塩基配列を検索するとともに、その特異部分にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドDNAプロ-ブを開発し、in situ ハイブリダイゼ-ション法による環境場でのメタン生成細菌の定量的検出方法を確立する予定である。
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