本研究の目的の1つは、多数スリットによる垂直吹き出し方式を適用した室内の気流特性を超音波流速計を用いて3次元的に把握することであるが、計測の結果、当初意図した特性に近い風向のランダム性が確認された。 ついで、同室内において椅座状態で2時間滞在したときの微弱気流(平均流速21cm/s)の快さに関する被験者実験を行った。室温は24、26℃湿度55%である。被験者は全身温感が中立になるように着衣を調節している。その結果25℃近域で「快適感」が最も高くなるとの結果を得た。これは、別途実施した無風時(平均流速10cm/s)の実験での最快適温度22℃より3℃ほど高く、微弱気流の効果が示された。ここで、有風時・無風時いずれにおいても快適感は額からの放熱量と高い相関を有し、また、「さわやかさ」感と高い相関を有した。 しかし、本研究の中心課題の一つである、微弱気流の存在による「気流感」が「快適感」に有意な寄与をしているかどうか、は今後の課題として残された。 ついで、送風機を追加してより流速の高い気流を室内に発生させることを試みた。ここで、送風機の騒音の問題など、室内の流速を高めるにはスリットと送風機特性との整合性に係わるシステムの改良が必要なことが判明し、実用化へ向けての課題が明かとなった。 したがって、当初意図したある程度の流速場での「気流感」に関する被験者実験は、ノズルからの水平流を用い0.2〜1.2m/sの範囲の流速を被験者の正面から当てる方法で行った。気流暴露時間は約3分間である。その結果、「快適感」は「気流の強さ感」と「気流の温感」との関数で表現できることが明かとなり、結局、「快適感」は流速と放熱量の関数で表現された。
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