本研究は、人が環境から受け取る情報を、意識的に注意の向けられた環境の局所的な部分(要素)から取り出される注視情報と、受動的に広い範囲の環境から受け取られる周囲環境情報とに大別し、後者の視覚情報をパ-ソナル・コンピュ-タを用いて定量的に記述する方法を提案し、その心理的影響との関連を求めたものである。 初年度は、住宅地の屋外空間について、その場の雰囲気と、住棟や樹木の密度・配置によって異なる各環境要素ごとの立体角や可視空間量などとの対応関係を求め、樹木の立体角(環境緑視量)が「自然なー人工的な」の心理尺度と、可視空間量が「圧迫感のあるー開放的な」とよい相関を示すことなどを明らかにした。 次年度は、同様の方法を屋内環境の評価に適用することを試みたが、CCDカメラを用いたシミュレ-ション装置の不調からこれを断念し、やはり屋外空間について、初年度あまり明確な結果の得られなかった景観の変動性と視環境の複雑さとの関係を、シ-クエンシャルな変化と、固定視点周りの視方位による変化の両面から究明した。その結果、後者については、パ-ソナル・コンピュ-タを用いて定量的に記述された視環境要素の配列(視環境要素分布)の隣合う要素間の変動率によってよく説明できることが明らかになったが、前者については、視環境要素分布の連続観察点間の変化量との相関は見られたもののあまり明確な結果は得られなかった。これはシミュレ-ションの方法(スライドの連続提示)の問題とも考えられるので、今後自由な視点移動が可能なシミュレ-ション方法に改善しさらにその関係を究明する予定である。
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