本研究は、近世城下町の都市設計の方法、なかでも職人町の配置計画を、重要な都市施設である上水の配置計画を通して明らかにすることを、目的としている。 城下町の都市設計の基本は、封建的身分秩序により住区の設定にある。職人は、近世初頭には、技術に応じた役を負担し、同一地域に居住した。鍛冶屋・鉄砲屋など軍需関係職人は、家臣団とともに城郭近くに居住する例が多い。その後、生産の主体が武器から農具・土木用具に代わると、町人地のなかでの裏町、あるいは町の外縁部に移動した。 職人町のなかで上水と関係の深いのは、清冽な水を必要とし火災の危険が高い鍛冶屋・鉄砲屋などの町と、大量の水を必要とし排水が汚れる紺屋などの町である。これらの職人町と上水の配置計画の関係をみると、(1)上水を別系統とし、また(2)流路の末端に位置させる、などの原則が見いだされ、以下の点が指摘できる。 1.鍛冶屋については、仙台・山形・米沢・佐賀において別系統と流末の原則がみられ、福井・福山において別系統の、棚倉・新発田において流末の原則がみられる。 2.鍛冶屋の生産品が武器から農具などに代わったために町が移転した例として、新発田・山形・甲府がある。 3.紺屋については、仙台・米沢・水戸において別系統と流末の原則がみられ、福井・佐賀において流末の原則がみられる。 4.紺屋町の配置に上水網の配慮を欠いたために営業が衰微した町として、仙台(上染師町)・甲府(新紺屋町)などがある。
|