研究概要 |
本年度の研究により得られた主な成果は以下の通りである。 1.ASR法(非弾性ひずみ回復法) 岩手県の地熱フィ-ルドから採取されたコアを用いて現場測定を行い,数箇所の深度について,主応力の方向と偏差主応力の比を計測した。主応力の方向と偏差主応力の比は,理論的に予測されたように時間にかかわらずほぼ一定であり,得られた結果は信頼性の高いものと考えられた。一方,十分に大きな非弾性ひずみが得られなかった場合もあり,より広範囲の岩石にASR法を適用するためには,測定装置の精度を更に改良する必要があることが示された。 2.DSA法 昨年度に引き続き,応力解放法により地圧が測定された2地点のコアを用いてDSA を行った結果,DSA法による結果は必ずしも応力解放法の結果と一致しなかった。この原因を調べるために以下のことを行った。まず負荷した一軸引張応力により岩石がどの程度損傷するかを調べたところ,花崗岩を引張破壊するまで負荷しても△β/βで約0.7の上昇がみられる程度であり,DSAで得られる値よりかなり小さかった。次に,これまでに行った地圧下のボ-リングに伴うコア内応力の計算結果に基づき,応力解放法の結果が正しく,またコア内で発生する最大引張応力に比例してクラックが生ずると仮定して引張主応力を計算したところ,DSAで予測したクラック密度の主値の方向とは一致しなかった。さらに,DSAにおいて,従来のクラックパラメ-タの他に,クラックのアスペクト比を表わすVijに注目して解析したところ,当該岩石には幾つかのクラック系が存在することが示された。これらのことから,DSA法を真に信頼性の高い方法とするためには,応力解放以前に存在するクラックと応力解放に伴うクラックを分離する必要があることがわかった。
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