研究概要 |
本研究では、磁性材料や耐熱材料として開発が期待される金属間化合物Fe_3Alの表面よりB,VおよびTiを拡散させた後、SIMSを用いて深さ方向の濃度分析を行い、B,VおよびTiの拡散係数、アイソト-プ効果を求める。つぎに、得られたデ-タを基礎にして統計力学的検討を加え、低温における金属間化合物Fe_3AlのB2→DO_3規則化に伴うB、VおよびTiの拡散機構の変化を明らかにする。本研究は金属物性学上の未解決な問題、すなわち、原子の拡散の動力学と金属間化合物の構造との関係を実験的、理論的に解明するものである。本研究ではこのような目的にそって、初年度の本年度は先ず、金属間化合物Fe_<3+x>(x=0.04)を高周波真空溶解により作製した。つづいて、作製した金属間化合物の表面を鏡面に研磨し、研磨面をB、VおよびTiで蒸着により被覆した後、被覆層を金属間化合物Fe_<3+x>Al_<1ーx>(x=0.04)でさらに被覆した。つぎに真空炉を用いて、低温から高温までの広い温度範囲(0.7Tm〜0.3Tm:Tmは融点)で拡散処理し、SIMSを用いて深さ方向のB,VおよびTiの濃度分析を行った。深さの測定は本補助金により購入した表面粗さ測定器で行った。その結果、B^<10>、B^<11>、V^<50>、V^<51>、および、Ti^<46>、Ti^<47>、Ti^<48>、Ti^<49>、Ti^<50>の拡散定数はB2→DO_3規則化が起こる温度以下ではこの温度以上からの外挿値よりも大きくなることが分かった。また、これらの原子の拡散のための活性化エネルギ-はいずれもB2→DO_3規則化が起こる温度付近より大きく減少し、B2→DO_3規則化に伴い拡散機構が変化することが明らかとなった。さらに、B^<10>、B^<11>、V^<50>、V^<51>、およびTi^<46>、Ti^<47>、Ti^<48>、Ti^<49>、Ti^<50>の拡散定数より同位体効果が求められ、拡散機構を詳細に解明するための手がかりを得ることができた。
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