研究概要 |
平成2年度の研究成果から各種抽出剤の中から,溶媒和抽出剤が本研究に対して最適であることを確めている。対象金属として平成2年度は鉄をとり上げたが,本年度は亜鉛をとり上げ,研究実施計画に基づき,供試水溶液として塩化亜鉛水溶液を用い,抽出剤としてはメチルイソブチルケトン(MIBK)とシクロヘキサノンを希釈せずに用い,Znの抽出特性,有機相中にZnと共抽出される水,塩素イオンの減圧濃度操作における挙動に及ぼす要因の検討を行った。新らたに得られた知見としては, 1)塩酸濃度の増大とともにZnの分配比は増大するが最大抽出量はMIBKでは75kg/m^3,シクロヘキサノンでは50kg/m^3である。 2)MIBKでは1モルのZnにつき,塩化物イオン4モル,シクロヘキサノンでは1モルのZnにつき,塩化物イオン2モルの割合で結合した化学種が抽出されると考えられる。 3)有機相中のZn濃度と水分濃度との関係から,MIBKでは1モルのZnにつき水9モル,シクロヘキサノンでは11モルの割合で結合した化学種が有機相中に抽出され,Fe(III)の場合と比較する水の付加モル数が非常に大きくなっている。 4)MIBKではZn(Hcl)_2,シクロヘキサノンではZnCl_2(H_2O)_2の四面体構造の錯体に水分子9個付加して抽出されると考えられる。 5)Znを抽出したMIBK,シクロヘキサノンの減圧濃縮操作でH_2O/ZnはMIBKでは0になり完全に除去できるが,シクロヘキサノンでは2以下に減少できない。 6)Cl/ZnはMIBKでは4から2まで減少できるが,シクロヘキサノンでは2のまゝで変化しない。 7)錯体に付加している水分子および塩酸の結合は弱く減圧蒸発操作により除去できるが,錯体内の水分子は結合が強く除去は困難である。
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