1.海藻類を利用した金、銀、コバルトイオンの吸着および溶離 (1)わかめ、こんぶなど7種の海藻類を用いて、塩化金酸水溶液からの金の吸着、硝酸銀水溶液からの銀の吸着および硫酸コバルト水溶液からのコバルトの吸着について実験した。各金属イオンとも吸着挙動は水溶液のpHによって大きく左右され、温度の影響はほとんど受けず、従って吸着反応はイオン交換的反応と思われる。金の吸着率は低pH側において高かったので、陰イオン交換的と思われ、銀およびコバルトの吸着はpH6付近において高かったので、陽イオン交換的と思われる。海藻類の種類別と金属イオンの種類別の組み合わせにより吸着能力に大きな差が認められた。 (2)吸着実験によって求められた吸着率最高の条件において金、銀あるいはコバルトイオンを予め吸着させた海藻類を異なったpHの水溶液と接触させることによって溶離実験を行った。その結果、コバルトの溶離はpHの低下だけで行われほとんど吸着と可逆的であった。しかし、金の溶離はpHの変化だけではほとんど行われず、pH調節と溶離剤添加の併用が必要であった。銀については、pHの調節である程度溶離されたが吸着に対して可逆的とはいえない挙動であった。 (3)塩化金酸と塩化コバルトの混合水溶液をpH1〜2において海藻類と接触させることによって金の優先吸着分離を行うことができた。 2.白金およびパラジウムの吸着 塩化白金酸水溶液からの白金の吸着ならびに塩化パラジウム水溶液からのパラジウムの吸着を海藻類を用いて行った。その結果、白金もパラジウムも低pH側でよく吸着され、総じて陰イオン交換的吸着とおもわれるが、高pH側で金と吸着挙動のかなり異なる海藻類があり、この現象が金との分離に役立つ可能性が考えられる。
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