研究概要 |
本年度は,代表的な構造用ファインセラミックスである非酸化物系の,1.窒化ケイ素セラミックスと酸化物系の,2.ムライトセラミックスの高温高圧水中(300℃,8.6MPa)での腐食試験および室温での曲げ強度測定を行った.その結果,1.については,原料粉体が同一のY_2O_3ーAl_2O_3系およびMgO助剤系の2種類の常圧焼結体の腐食挙動の比較では,腐食速度,腐食量に明確な違いはあるものの,腐食形態としては,いずれもPitting Corrosionが進行することが確認された.これら腐食形態に関しては,助剤の違いによるモデルを提示し,“材料と環境"Vol.40,No2(1991)に報告した.また,腐食に伴う強度劣化は,腐食初期にほぼ2/3まで低下し,それ以後は一定値を保つ申請者の従来の研究結果と一致する傾向が見い出された.2.については,4種類の市販のムライト焼結体の試験結果から,二成分系セラミックスの特徴として,原料粉体合成法,組成,微細構造に起因する顕著な耐食性の違いを示すことが明らかになった.耐食性を原料粉体合成法で整理すると,原子オ-ダ-での均質化が可能なアルコキシド法粉体を用いたものが最も高耐食性を示し,さらに従来の固相反応焼結体においても粒界を構成する副成分として,ジルコニア添加の焼結体でも同程度の耐食性を有することが明らかになった.最も耐食性が劣るゾル-ゲル法粉体を用いた焼結体では,結晶粒界へのシリカ相の偏在によると思われる選択的侵食が進み,著しい腐食減量と100μmオ-ダ-での腐食層を形成する結果を得た.また,ムライトの強度劣化についても,窒化ケイ素の場合と同様,約2/3に低下する結果が得られた. 以上,本年度の実験結果から,セラミックスの高温高圧水中での耐食性向上の基本的指針として,粒界組成,粒界相体積の制御が最も重要な因子であることが確認された.
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