良好な成膜性を示した5ー(pードデシルオキシフェニル)ピラジンー2ーカルボン酸1のYー形累積膜の赤外スペクトルの詳細な検討により、膜中での分子配向を明らかにし、さらに1とアラキン酸との交互累積は400層以上まで可能であり無機の典型的な非線形光学材料であるニオブ酸リチウムに匹敵する二次非線形光学効果を示すことを明らかにした。LangmuierーBlodgett法によって導波路試験を行いうる厚さの累積膜が得られたのち初めての例であり、現在導波路試験を開始した段階である。 1の疎水基末端にヒドロキシル基を持つ化合物2の合成を行ったが、2は単独では累積不能であるため、1との混合単分子膜の強制Z形累積を行った。しかしながら累積操作中に反転が起こりYー形累積膜が得られ、二次非線形光学効果は観察されなかった。 そこで、次にヒドロキシル基をアクリル酸クロリドによりアクリルエステルとした3を合成した。3はZー形の累積を示したが、二次非線形光学効果を示さずこの場合も累積操作中の膜の反転によるYー膜の形成が示唆され、X線回折の結果もYー形の層間隔を示した。しかしながら、3を一層累積する毎に低圧水銀ランプにより照射しアクリル基の重合を行ったところ、強い二次非線形光学効果を示す累積膜が得られた。この結果は、重合により膜の反転を防止することができ、Zー形累積膜が得られる事を示している。また、重合により、膜の熱安定性も向上することが明らかになった。 現在、強い二次非線形光学効果を発現するための累積および光重合の最適条件を調べている。
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