前年度はSiC、及びCu_2Oなどの化合物半導体光電極による炭酸ガス還元反応を試みた。本年度はひき続き、アルコ-ル発生に適当な化合物半導体の探索を行なった。さらに水素吸蔵金属であるパラジウムを電極材料として用い、吸蔵水素を利用した炭酸還元を試みた。 (1)化合物半導体電極による炭酸ガス還元 本年度は銅を含んだ化合物半導体に着目し、Cu_2Sと、CuOーZnOの二種類の材料で炭酸ガス還元を試みた。 ・Cu_2S:Cu_2Sは無電解メッキ法により作製した。光照射下、及び暗中下で電流・電位曲線を測定することにより、光電流が生じることを確認した。約ー0.5VvsSCEの低い電圧下で炭酸ガスがメタンに還元される現象を光照射下でのみ観測した。但し、電極自体が還元される反応も進行するため、安定性に欠けていた。 ・CuOーZnO:本材料は触媒反応において、メタノ-ル合成触媒に使われている。これを電極材料に用いることにより、比較的大きく、安定な光電流を観測した。まだCO_2の還元生成物を得るに至っていないが、有望な材料であると予想される。 (2)水素吸蔵金属:通常の電極反応は、電極上、すなわち二次元平面上で反応が進行する。一方、もし水素吸蔵電極中に吸蔵されていた水素ラジカルが反応に直接関与できるならば、反応場の次元が三次元となり、新しい反応経路が開けると予想される。そのような推定のもとで、水素を吸蔵させないパラジウムと、十分に水素を吸蔵させたパラジウムを電極に用いた時の炭酸ガス還元生成物を比較した。すると水素吸蔵したパラジウム上ではCO、及びギ酸の生成効率が上昇することが明らかになった。
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