本研究においては、炭酸ガスを電気化学的、及び光電気化学的手法により還元して、アルコ-ルを得ることができる電極材料の設計が主目的であった。そこで以前、我々が提唱した炭酸ガスの還元反応の分子論的モデルを基にして、Cu_2O、SiC、Cu_2S、CuOーZnOなどのP型半導体性を持つ化合物半導体を用いた光電極反応、及び水素吸蔵金属であるパラジウムを電極として用いた電極反応を試みた。以下にその結果を示す。 (1)SiC電極:アモルファスのSiCを光カソ-ド極に用いることにより、約18%の電流効率でメタノ-ルを得ることができた。残りの電流は全て水素発生に使われていた。すなわち炭酸ガスの還元物はメタノ-ルのみであり、非常に選択的なメタノ-ル生成が起きていることがわかった。 (2)Cu_2S、Cu_2O:いずれの電極においても光照射下で、ー0.3〜ー0.5VvsSCE付近の低電圧で炭酸ガス還元が進行した。還元生成物はCu_2Sでは8電子還元物であるメタン、Cu_2Oでは6電子還元生成物であるメタノ-ルであった。生成物の選択性は非常に高く、ほぼ100%がこれらの物質であった。しかし、これらの電極においては電極自体が不安定であり、電解を続けると還元され銅金属になっていった。 (3)CuO/ZnO:CuO、及びCu_2OをZnOを混合焼結し、電極を作った所、比較的大きな光電流が得られた。しかも、この電極はCuO、Cu_2O単味のものよりもかなり安定で、光電流が長時間一定の大きさで得られた。まだ炭酸ガス還元生成物の同定には至っていないが、今後有望な材料である。 (4)水素吸蔵電極:パラジウムに十分水素を吸蔵させた状態で炭酸ガス還元を行なうと、吸蔵水素が反応に利用できることがわかった。
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