研究概要 |
二成分系ポリマ-ブレンドとして、上限臨界共溶温度(LCST)型のポリスチレン/ポリ(2ークロロスチレン)(PS/P2CS)ブレンドを用いた。それぞれの分子量はMw=140,000(Mw/Mn=1.9)およびMw=84,000(Mw/Mn=2.3)である。PS鎖を光架橋するため、アントラセンを感光団としてラベルした。一相領域(166℃)からスピノ-ダル領域(193℃)へ温度ジャンプさせ、時間と共に発展していくスピノ-ダル分解過程の最中に光照射し、PS鎖間の架橋反応を誘発した。様々な条件下で照射したブレンドについて位相差光学顕微鏡、光散乱法、画像処理、誘電緩和によりその構造ー物性の相関関係を明らかにした。 得られた結果は次の通りである: 1)光源効果:スピノ-ダル領域において、30分間250Wの水銀灯で照射した場合、相分離速度が速いため、秩序構造を固定化することができず、二相構造(海ー島)構造が得られた。一方、Hg灯の光をレンズで集光させる場合スピノダル構造は有効に固定化され、XeFエキシマ-レ-ザ-を用いた場合と同様な結果が得られた。 2)照射時間の効果:温度ジャンプしてから、同一の熱履歴を有するPS/P2CS(40/60)ブレンドを種々の条件下でレ-ザ-光照射した。スピノ-ダル分解過程の初期で照射した場合と相分離がある程度進行させてから光架橋した場合に得られた秩序構造が異なることがわかった。前者の場合では、均一の周期性構造が得られるのに対して、後者の場合では不均一の周期性構造が見られた。本年度に購入した画像処理システム(Pias社製、モデル LAー525)により顕微鏡下で観測された画像をFourier変換した結果、高次ピ-クが見られた。一方、暗所で同一の条件で温度ジャンプさせた場合に得られた構造は均一な周期を有することがわかった。さらに、浅い温度ジャンプ(80℃から185℃まで)をさせてから照射した試料の光散乱強度の角度依存性も高次ピ-クが見られた。これらの結果より、PS鎖間の光反応は系中に反応ー拡散機構に類似した熱力学的不安定性が形成されたと考えられる。 3)光固定化したブレンドの物性:様々な条件下で照射した PS/P2CSブレンドについて誘電緩和法により、30Hzから900Hzまでのtanδを測定した。結果として、同一の架橋密度を有するブレンドでは、後から照射すればするほどtanδの極大が高温側へ移動したことがわかった。誘電緩和で得られたこれらの結果はミクロン秩序構造を反映していると思われる。 現在、光照射されたPS/P2CSおよびポリスチレン/ポリ(ビニルメチルエテ-ル(PS/PVME)において発現した秩序構造と反応ー拡散機構との相関関係について検討中である。
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