研究概要 |
有機ホウ素ポリマ-は、新しいタイブの反応性高分子として興味深いものである。本研究では、ハロボレ-ション反応という、従来有機合成の分野では知られていたが、それを直接高分子合成に利用した例は報告されていない反応を用いて、新規の有機ホウ素ポリマ-の合成に成功した。 昨年度の本研究により、1,7ーオクタジインと三臭化ホウ素との反応を行うと、対応する有機ホウ素ハライドのポリマ-がほぼ定量的に得られることがわかった。本年度は、この重合の一般性を確立するために、1,8ーノナジイン、1,9ーデカジイン、Pージエチニルベンゼン、1,4-ジエチニルー2,5ージメチルベンゼンなどの脂肪族および芳香族ジインモノマ-について、三臭化ホウ素とのハロボレ-ション重合を検討した。その結果、それぞれ対応するポリ(有機ホウ素ハライド)が、高収率、高分子量で合成できた。得られたポリマ-は空気に対して不安定であり分解するが、窒素雰囲気下では安定に取扱うことができ、再沈澱により精製単離することができた。ポリマ-の構造は、IR,UV,'Hー ^<13>Cー, ^<11>BーNMRなどにより同定することができ、また、生成ポリマ-の酸分解による検討から、この重付加反応は主としてシス付加で起こっていることが明らかとなった。 ハロボレ-ション重合で得られたポリマ-は、新しいタイプの反応性高分子として利用することができ、例えば、アルコ-ルや水と反応させると、ポリマ-中のBーBr結合がBーO結合に置換されることがわかった。また、モノアセチレンと反応させると、更にハロボレ-ション反応が起こり、アルケニル置換の有機ホウ素ポリマ-が生成した。更に、得られたポリ(有機ホウ素ハライド)が高分子ルイス酸である特性の一つとして、THFなどの環状エ-テルを開環させることができた。
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