本研究は多糖類を有機溶媒中で酵素加水分解させ効率的にオリゴ糖を生産する画期的な方法を開発する事を目的として行った。先ず、基質として可溶性澱粉、酵素にはBacillus subtilis由来のαーアミラ-ゼを用いて、一定の割合で酵素水溶液を含むヘキサンあるいはドデカンを溶媒系として反応を行った。その結果、水の有機溶媒に対する体積比が10%のときオリゴ糖生成量が最大となり、水系の約1.7倍であった。このときの澱粉のオリゴ糖への変換率は66%であった。次に、寒天を基質としてオリゴ糖の生成を試みた。寒天分解酵素の市販品はきわめて入手しにくいため、海洋微生物からのスクリ-ニングを行った。その結果硝酸ナトリウムを含む無機栄養培地の寒天プレ-ト上に、寒天分解能力を有する細菌が3株得られた。しかし、いずれの株もヘキサンあるいはドデカンを含む液体培地中では増殖できず、有機溶媒耐性が見られなかったことから、本実験系には不適当であると判断され、以降の実験は行なわなかった。一方、αーアミラ-ゼによる有機溶媒中での澱粉分解において24時間以内に酵素が失活してしまった。そこで、反応系に界面活性剤を添加することにより逆ミセルを形成させ、酵素の安定化を試みた。その結果、Tween60を添加することにより、水系とほぼ同等の安定性が達成され、また、75時間後のオリゴ糖生成量は水系の1.5倍であった。また、アルギン酸カルシウムによって酵素を固定化した場合も有機溶媒中でのαーアミラ-ゼは安定化され、140時間後には水系の4倍以上のオリゴ糖生成量が達成された。酵素の安定化は、逆ミセル、固定化により酵素周辺に親水的な雰囲気が保持されたためと考えられた以上のように、本研究成果はきわめて基礎的ではあるが、今後の食品分野をはじめとするバイオインダストリ-の発展に充分寄与できるものと予想される。
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