1.イネカルスにおける葉緑体DNAの変異 イネ品種Tadukanの種子よりカルスを誘導し、継代培養期間の異なるカルスより全DNAを抽出し、制限酵素Hind lllで切断後に、非放射性のDigoxigeninで標識した葉緑体DNAプロ-ブとのサザンハイブリダイゼ-ションを行なって、その多型を分析した。その結果、1年以上の長期間継代培養したカルスでは塩基置換によって新たな切断部位が生じること、この変異の断片はイネ葉緑体DNAの全塩基配列と照合すると遺伝子ののっていない非コ-ド領域で塩基置換によって生じたものであることが明らかになった。 2.再分化植物とその後代での変異の遺伝 変異のみられるイネカルスより植物を分化され、60個体につき変異を調べた結果、7%においてカルスにおけるのと同様の変異した断片が検出された。またこの変異の断片は正常のDNA断片によりシグナルが薄いので、この場合、葉緑体DNAは正常な分子種と変異した分子種のキメラであることが考えられる。再分化当代で変異を示すもの2系統の次代(R2)を調べた結果、いずれでも再分化当代で認められた変異した断片は検出することができなかった。このことは変異型と比較して正常型のみが優先的に複製されることを暗示している。 3.イネカルスにおけるミトコンドリアDNAの変異 同様にしてミトコンドリアDNAをプロ-ブとしてミトコンドリアDNAの変異を解析した結果、シトクロム酸化酵素サブユニットI遺伝子(CoxI)の近傍に8Kbpの挿入変異が認められた。 このことからオルガネラDNA遺伝子の改良には組織培養による変異の誘起が有効であることが推察される。
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